2013年7月18日木曜日

防腐・防蟻剤に関して

土台ばかりか柱や筋交もシロアリに喰われて浮いてます

玄関の柱を伝って庇や屋根まで登ってます

ここ数年から、防腐防蟻剤はホウ酸塩を使うようになりました。
今回のリフォームの現場にもホウ酸塩を「全構造体」に噴霧してあります。

ホウ酸処理に関してはこちらが詳しいです。
日本ボレイト株式会社


建築基準法では、地面から1m以内の木材に防腐防蟻処理をする事が義務付けられています。
基本的にこれらは農薬です。

以前はクロルピリホスという有機リン化合物系防蟻剤が多用されていました。
これは揮発性であり、シックハウス症候群を引き起こすとして現在は規制対象になっています。

現在は、蚊取り線香にも使われている防虫菊の成分であるピレスロイドを化学的に合成されたものなどを使用しています。
ゴキブリ用の殺虫スプレーにも使われている農薬成分です。
ピレスロイドは哺乳類には害が少ないですが、水に溶けにくいので有機溶剤に溶かして使用されます。ピレスロイド自体には揮発性はありませんが有機溶剤は揮発しますし、環境においては分解が進むので効果は数年でなくなります。

従来の防腐防蟻剤の問題は、シックハウスは別としても効果が数年でなくなり、一端出来上がった家には再塗布ができないことです。
つまり数年で、無防備になってしまうのです。


ホウ酸塩は鉱物です。塩という名の通り水にとける塩類です。
鉱物なので揮発性はなく、半永久的に残ります。

哺乳類に対する毒性に関しては低いです。
毒性が低いので以前は、目薬や消毒薬、食品保存添加剤として多用されていました。

毒性が低いと言っても多量に飲めばもちろん話は別です。ホウ酸塩は無味無臭で水にも溶けるので、間違って多量に誤飲する事故が多発したために薬品や食品用としては禁じられました。

毒性を心配する方は、昔のこういった事件が印象に残っている為です。
ちなみに人間の致死量は一つの基準としては食塩と同じくらいだそうです。

構造体に水に溶かしたホウ酸塩を噴霧すると、木に吸収され水分は蒸発します。
揮発性はないので、多量に木を齧らなかぎり毒性を発揮しません。

シロアリや腐朽菌には効果的です。ゴキブリは表面を歩くだけでは効果はないでしょう。
鉱物なので半永久的に効果が残ります。
ただ、水に溶けやすいので雨がかかる外部には使えません。

ホウ酸塩を使うことで健康に影響がない防腐防蟻処理が半永久的に得られます。

最近の問題として、外来種のアメリカカンザイシロアリがあります。このシロアリは土壌からではなく、外から飛んできて軒などから取り付きます。
一端取り付くと家全体を燻煙処理するなどしなければ退治できません。日本ではそのような対策はまだ用意されていません。

幸か不幸か、このシロアリの被害は緩慢に進みます。効果的な処理方法が無いことも有り、現状では放置されることが多く、近隣の家に広がってコロニーを形成することが報告されています。
関東近辺でも、集中被害を受けている街がいくつかあるそうです。

アメリカでは、これに対する予防としてホウ酸塩を家の構造材全体に噴霧することが義務付けられている行政が多いそうです。(ハワイ等)
日本のシロアリは土壌からくるので地面から1mという規定になっていますが、アメリカカンザイシロアリは外から取り付くので家全体に処理することが必要になります。

これにかかる費用はそう多額ではありません。通常の防腐防蟻剤に比べると処理範囲が増えるのですが、それでも床㎡あたり1000円~くらいです。
後々の費用を考えるとやっておくべきだと思います。

シロアリは環境には必要不可欠な生き物です。不要な木材を土中に返すのにこれほど効果的な方法はなく、したがってどこにでもいると考えて良いです。
ですので、「不要ではない」家の木材を守るにはホウ酸塩は良い処理だと思います。


0 件のコメント:

コメントを投稿